キミに出会うまで
真実
森さんとまともに会話しなくなってから、半月ぐらい過ぎた頃、部長から会議室に来るように呼ばれた。


「失礼します」


ノックしてドアを開けると、部長と森さんがすでに座っていた。


「坂本さん、森さんが新しいシステムで作った書類を出力してくれたから、ちょっと見てくれる」


「はい」


手に取った書類は、私が要望したことがほぼ反映されたものだった。


「これって・・・」


「森さん、坂本さんの希望通りになるべくしたくて、残業もしてくれたそうだ。


坂本さんも、あれだけ強く言ったかいがあったもんだ」



森さんをチラッと見ると、ドヤ顔でニヤニヤしてた。


「あ、ありがとうございます」


「べつに、言われっぱなしは悔しいし、何もできないヤツと思われるのは心外なんで」


「これで、商品部のみんなに嬉しい報告ができます!」



そのまま書類を持って出ていこうとしたら、



「あっ坂本さん、今晩あいてる?」


部長が慌てて言った。


「あいてますが?」


「実はね、森さんと坂本さんと3人でお疲れさまってことで、一席設けてるんだけど、来るかい?」


部長のいきつけの、中華かな。


想像したとたん、その店の小籠包が目に浮かんで、


「はい、行かせていただきます!」


と、返事をしてしまった。


森さんと気まずかったんだ、と自覚したのは、自分の席に戻ってからだった。




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