キミに出会うまで
そして、翌日。


親に『会社の同僚と北海道旅行へ行ってくるね』と嘘をつくのは心苦しかったけど、たしかに同僚だし。


キャリーバッグをコロコロ引っ張りながら、空港に向かう。



待ち合わせ場所に、森さんは立っていた。


私服だと、同い年くらいに幼くなる。


ほどよく着崩したポロシャツに、カーゴパンツ。


あっ、森さんじゃなかった、優樹さんか。



「おはようございます」


「おはよ」


「お待たせしてすみません」


「優花さ」


「はい」


「敬語やめろって」


「あ・・・ご、ごめんなさい」


「荷物多くない?」


「あっでも、中身は半分空っぽだから」


「おみやげスペースってことか、優花らしいな」


「だって、いろいろ必要だし」


「ほら、行くぞ」



さりげなく、キャリーバッグを持ってくれる。


そういう優しさ、弱いんだけど。


でもきっと、相手が誰でも持ってあげるんじゃないかと思う。



だから、だいじょうぶ。


優樹さんを、好きにはならない。



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