キミに出会うまで
逆流
早めの昼食をみんなで済ませ、会場のホテルに向かう。


今晩はここに泊まるんだ。


部屋はシングルだし、広くはないだろうけど、清潔だったらそれでいいし。


でもこのホテルのいいところは、宿泊者だけが入れる温泉があるところ。


広いお風呂って、それだけで気持ちいいし。




そんな、多少ウキウキしていた私の気持ちは、てっちゃんを見かけたとたんにしぼんでいった。


てっちゃんは、6月に会った時と変わらない。


細身のスーツが似合う、背の高い後ろ姿。


私、後ろ姿だけで、気づいちゃうんだ。


この気持ちは、なんなんだろう。


自分でも良くわからない。



突然、後頭部をつつかれた。


振り向くと、


「無理すんな」


森さんが立っていた。


「うん、平気」



そばにいてくれるだけで、安心した。




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