気になるパラドクス
いやぁ……磯村くん。ずいぶんハッキリと断言したのねー。

もう、何て言うか勇者だね。

そして黒埼さん……あなたは、そう言われて乗り込んで来たわけですか?

どういう性格してるんだ、あなたは。

まぁ、とりあえず私が答えることもないよね?

「……プライベートな事にお答えするつもりはありませんが」

恐る恐る呟くと、鼻で笑われた。

「想像通りの優等生な答えだな。もうちょっとひねった答えだと楽しいんだけど」

答えにひねりを加えろと?

「ところで村居さん、歳はいくつ?」

「お答えするつもりはないと申し上げました」

後は明日にしようか。

パソコンに向き直ると、ワードとエクセルの画面を保存して閉じる。

それから黒埼さんを無視してパソコンの電源を落とすと、立ち上がった。

「まぁ、俺より年上って事はないな。でも20代でもなさそうだ」

すみませんね。20代じゃないですよ。
ないからどーだよ。

さすがにムッとしてプリンターに向かう。

気がつけば静かになっていたプリンターから書類の束を取り上げて、枚数を確認……していたら、キシッと椅子の軋むような音がして振り返った。

黒埼さんが人のデスクに、楽しそうに何か置き始めている。

何をしているんだろうと近づいて、目を輝かせた。

「子羊ちゃん!」

色とりどりの子羊ちゃん人形。

カエルさんと並ぶ、フロッグすてっぷの人気キャラクター。

フワフワもふもふで、キュートなお目目が可愛い!

白とピンクと黄色と……。

「……あんた、可愛いもの好きそうだなー」

言われて、真面目な顔を貼り付ける。

「気のせいです」

テキパキ書類をしまい、テキパキ帰る支度を始めていたら。

「村居さんは、差し入れ蔑ろにするほど礼儀知らずじゃないよな?」

無言で黒埼さんを見たら、彼も無言で見返してきた。

わかりましたよ、食べますよ。

椅子に座り直して、手を差し出した。

「無糖紅茶でいいです」

「……ちなみにきっと甘党だな」

苦笑されて、ペットボトルを受け取った。
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