ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



コンクリートの壁から背中を離し、座ったまま私の方に体を向ける。


いつもの敬太は、感情を素直に顔に表すタイプ。

怒っている時は眉間にシワを寄せ、楽しい時には顔をクシャッと崩したとてもいい笑顔を見せる。


でも今の敬太は、何を感じているのか分からない顔をしていた。


怒っているようにも見えるし、悲しそうにも見えるし、逆に楽しそうにも見える。


まるで能面みたいに様々な感情を浮かべる敬太は、私をまっすぐに見て、こう言った。


「俺も霞が好きだ。俺と付き合ってよ」


「え……?」


思わず聞き返してしまったのは、予想外の台詞だったから。


私が好き? 付き合う?
敬太は何を言っているの……?


真斗が死んだのは私のせいだって、白状した。

ナニカは私の嘘から生まれた化け物だってことも説明した。


全ては私のせいなのに、どうして敬太はそんなことを言うの?


付き合ってと言われても頷けないでいる私を見て、敬太は取って付けたような大げさな笑顔を浮かべて見せた。


< 194 / 247 >

この作品をシェア

pagetop