ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「閉じ込めるの?」
「いや、こんなんで閉じ込められるとは思ってねぇよ。どんな動きすんのか確かめたいだけ」
前方のドアが外れるんじゃないかというくらいに、ガタガタと揺れていた。
それがやんで今度は、後ろのドアが揺れ始める。
閉じ込められると思っていないと敬太は言ったけれど、ナニカを足止めすることができている。
こうしている内に少しでも遠くに逃げたかった。
それなのに、敬太は動いてくれない。
ニヤニヤしながら、観察しているだけ。
すると、ガタガタとドアを揺らす音がピタリとやんだ。
そして……ドアと床や壁のわずかな隙間から、黒い液体がジワジワと染み出してきた。
「なにこれ……」
廊下へと流れ出てくる液体に、私は思わず後ずさる。
墨汁みたいな、泥水みたいな、ナニカが溶けたみたいな……溶けた?
溶けてくれたらいいのに。
溶けて蒸発して、このまま存在がなくなってしまえばいいのにと、つい期待してしまった。