ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
すると、ただ真っ黒だった表面に、犠牲者たちから奪った顔のパーツが次々と浮き出てくる。
桜井先生の両目と唇。飯塚先輩の鼻。
そして……揺れるイヤリングをぶら下げた、絵留の左耳……。
「どうして……なんで現れるのよ……」
震える声で呟くと、敬太が笑う。
「お前の願いが届いたからだろ?
何言ってんだよ」
違うよ……。
私は敬太を消してほしいなんて願っていない。
敬太が死ぬのは嫌だから出てこないでって、反対のことを願ったのに……。
何が何だか分からず、頭が混乱していた。
でも、深く考え込んでいる暇はないみたい。
ナニカは全ての顔のパーツを浮かび上がらせた後、床に下りて、ゆっくりと這うようにこっちに向かってきた。
「敬太、逃げないと……」
「何でだよ。戦うために呼んだのに。
取り敢えず、こっちだ」
敬太は私の手を引っ張り、前方のドアに向けて走り出した。
廊下に出ると急いでドアを閉め、引き戸に突っ張り棒をする。
すぐさま後ろのドアにも、同じように突っ張り棒をした。