ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
書かれている内容は、ニュースから拾った情報と、現場近くに住んでいるクラスメイトからの物が多い。
昨夜は閑静な住宅街にパトカーが何台もやってきたから、かなりの騒ぎになったそうだ。
そのクラスメイトは桜井先生の遺体を目撃した近所の人からも直接情報を入手していて、信ぴょう性の高い情報をグループトークに書き込んでいた。
スマホを持つ手が震えていた。
事件の衝撃をたった今食らった私は、恐怖で勝手に目が潤んできてしまう。
落とした学生鞄を、琴美が拾ってくれた。
梨沙はティッシュを出して、泣かないでと言ってくれる。
絵留は机に頬杖を付いて、スマホ片手に立ち尽くしている私を上目遣いに見て言った。
「怖がるのが遅いよ。
みんなで夜通しどうしようって言ってたのに、今知ったなんて、霞には呆れちゃう」
いつもの私なら、言い返していた。
『だって昨日は具合が悪かったから仕方ないじゃない』って、はっきり絵留に言ったと思う。
でも今は、震える声で「ごめん……」と言うのが精一杯。
絵留の非難めいた言葉よりも、頭の中は『もしかして』という可能性と恐怖でいっぱいだった。