ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



もしかして……その先は言えない。

怖くて言えない。


でも、口に出せない私の代わりに、敬太がそれを言ってしまう。


私のちょっと後に登校してきた敬太は、自分の机に鞄を投げ置くと、教卓の前に立って大声で言った。



「みんな、聞いてくれよ!
桜井先生を殺した犯人、ニュースでは変質者とかサイコパスとか言ってたけど、俺は確信してる。

犯人は……ナニカだ。
ぜってー、そうなんだ!」



敬太は寝不足なのか、目の下にハッキリとしたクマを作っていた。


でも体調の悪さなんて感じていないみたいで、興奮気味にパワフルに、クラス全体に向けてこんな説明を始めた。


昨日の放課後、教室内で桜井先生に説教されている時に、ナニカが発するブクブクボコボコという音を聞いた。


その時に桜井先生が『ナニカなんて、いるはずないじゃない!』と存在を否定したから、きっとナニカを怒らせたんだと思う。


今朝のニュースでは、新しい事実が公表されていた。

それは、遺体発見現場のアスファルト上に、帯状の黒っぽい粘液みたいな物が数メートルに渡って伸びていたということ。


これは女子トイレで見た、ナニカの移動跡と同じものに違いない。


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