ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太は片腕で私を守りながら、開いた扉の奥の暗闇に鋭い視線を向けている。
斜め上からは、真斗のコクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
恐怖と緊張で心臓がバクバク鳴る中で私が聞いたのは、前にも一度聞いたことのある音だった。
ブクブクッ……ボコボコボコ……。
どろりとした液体が沸騰しているような音。
気泡が湧き上がるような音。
それが、10メートルほど先のお社の中から聞こえてきて……私はとうとうナニカの姿を見てしまった。
黒い半透明のどろどろしたスライム状の塊で、大きさは大人の人間2人分くらい。
ゆっくりとお社の中から這い出て、賽銭箱の上に体半分を乗せていた。
う、うそ……。
まさか、本当に存在するなんて……。
私と真斗は言葉をなくし、敬太は「スゲェ……」と震える声で呟いた。
恐怖と驚きで目を見開いてナニカを見る以外、
何もできずに固まっていた。