空蝉
ほとんど無意識のうちに、ヨシキは駅まで向かい、新幹線に飛び乗って、地元に戻ってきた。
自分から逃げ出しておいて、何かあるとすぐまた帰ってくる。
馬鹿な人間だなと、ヨシキは自分で自分に呆れ返る。
当てもなく地元を歩いていたら、
「……ヨシキ?」
声に、弾かれたように顔を上げた。
エミだった。
小走りに駆け寄ってきたエミは、
「ちょっとあんた、どうしたの? こっちに戻ってきてたなら、連絡くらいしなさいよ。真理ちゃんの命日の時だって、結局、会えなかったじゃないの。心配してたんだからね」
「ごめんね、エミちゃん」
ヨシキはまた顔をうつむかせた。
肩をすくめたエミは、
「ねぇ、あんたどうせまた用もなく戻ってきたんでしょ? ってことは、暇よね?」
「え?」
「私が特別に、家に招待してあげる」
「……エミちゃんちに?」
「っていうか、名義は充だから、充の部屋ってことになるのかしら? とにかく私たちの部屋よ。まだ誰も呼んでないから、ヨシキが一番乗りね」
そういえば、充がエミと一緒に暮らすとか言っていた気がするが。
有無を言わせないエミは、ヨシキの腕を引きながら携帯を取り出し、
「もしもし、充? あのね、今、駅の近くでヨシキを拾ったから、うちに連れて帰るわね。じゃあね」
俺はエミちゃんの中で捨て犬と同等なのだろうか。
苦笑いを浮かべながらも、確かに行くところはないので、ヨシキは素直に腕を引かれておいた。
ふたりでタクシーに乗り込み、エミは目的地の住所を告げる。