空蝉


3日後だった。

美雨からの電話が掛かってきた。



「この前はありがとうございました」

「うん」

「私、あれから色々と考えたんです。これからのことも含めて」

「うん?」

「今の仕事、辞めようと思ってます。っていうか、またいつか戻ろうとは思いますが、ちょっとだけ、別のことをしようと思って」

「別のこと?」

「青年海外協力隊って知ってますか?」

「青年……、何?」

「平たく言えば、海外でのボランティア団体みたいな感じなんですけど」

「ボランティア」

「はい。ずっと知人から誘われてて、迷ってたんですけど、応募してみることにしました」

「………」

「誰かを助けることで私の罪は消えるわけじゃないですけど、でも、『しない善よりする偽善』っていう言葉の通りだと思って。同じ、生きてるなら、少しでも人の役に立つことをしている方がいいでしょう?」

「まぁ、確かにそうかもね」

「私も甘ったれてました。だから、そういう自分の根性を叩き直してきます」

「すごいね」

「あなたのおかげです。あなたに会えてよかったです。その感謝と、今までのたくさんの非礼をお詫びしようと思いまして。あと、私の決意表明を誰かに聞いてもらいたかったのもあって、お電話しました」


電話口の美雨の声は明るいものだった。

だからヨシキも安心してうなづく。



「受け取ったよ、きみの気持ち。頑張ってよ。俺も俺の道で頑張るから」

「はい」

「じゃあね」


そのまま電話を切ろうとしたヨシキだったが、



「あの!」


美雨は大きな声を出してそれを制した。

ヨシキが「うん?」と返すと、美雨は少しの沈黙を作った後、
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