十八歳の花嫁

第10話 伏兵

第10話 伏兵





『美馬帝国、新社長に愛人とご落胤!? 社長就任のために決めた十八歳の花嫁は単なるお飾り?』


そんな煽り文句が書かれた女性週刊誌が愛実の手の中にあった。


愛実はあの夜、新婚夫婦の寝室で朝を迎えても構わない、そんな覚悟で藤臣のキスを受け止めた。
だが、瀬崎の電話で婀娜(あだ)めいた空気は一掃され、なんと、愛実は藤臣に実家まで送り届けられたのである。


「問題が発生してね。今夜は屋敷に戻れないと思う。私のいない屋敷に、君ひとり置いてはいけない」


藤臣の表情は強張っていた。


そして、翌々日に問題の週刊誌が発売されたのだ。


そこには藤臣の愛人の存在が書かれていた。それは愛実が思いもよらぬ名前で……。

しかも心ない記者が学校の正門に待ち構え、生徒らにインタビューをし始めた。
そのせいで愛実はしばらく登校できなくなってしまう。
もちろん彼女にはなんの責任もない。表向きは“処分”ではなく、“自主的な判断”だった。


「あの子が東絵美(あずまえみ)、今年十歳よ。その隣が博之(ひろゆき)四歳。あのふたりが専務のご落胤って言われてるけど……ああ、ほら、今出て来たのが東恭子。十年前、専務に待ちぼうけを食らわせた女」


そこは、愛実が信一郎に襲われたとき、藤臣と一緒に過ごしたホテルだった。

ふたりが泊まったのと同じ部屋、というのにショックを受けながら……。愛実は由佳に頼み込み、ここを連れて来てもらったのである。
ホテル内にあるキャラクターショップに恭子は子供連れで入り、それぞれに何か買い与えて店から出て来た所だった。

確か、藤臣の二歳年上だと言っていた。
真面目で地味な優等生タイプと評していた気がする。

そんなことを愛実がポツリと呟くと……。


「そうね。デパート内の勤務評定もそれなりに優秀よ。子供の病気で急に休むことがあって、昇進からは外されてるみたいだけど」


そうなのだ。恭子はなんと東部デパートの婦人服売り場に勤めていた。


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