十八歳の花嫁

「当然、お邪魔してしまって。忙しいとは思ったんですが……」


そう言って、以前と同じソファに腰かけているのは和威だった。


「いえ、古い写真を整理していたんですが、思い出ばかり浮かんできて……なかなか進みません」


愛実は笑顔で答えた。


最初、和威の来訪と聞き少し怖かった。
もし彼が信一郎や宏志と同じような真似をしたら……。

とりあえず家政婦に近くにいてもらうことにした。いざとなれば母も家の中にいる。
最初は、美馬家の四人のうちなら誰でも、と言っていた母だが、この期に及んで藤臣との縁談を壊す気はないだろう。
しかし予想に反して、和威は以前の落ちつきを取り戻していた。


「結婚式は明後日ですよね……今さら、と思われるかもしれない。でも、結婚式の前に君が知っておくべきだと思って」

「どうか、なさったんですか?」


和威が感情的になっている様子はない。
その分、愛実の胸は得体の知れない不安でいっぱいになった。


「例の週刊誌だけど……。十歳になる娘さんの父親は――藤臣さんで間違いなかったんだ。DNA鑑定の結果が出たらしい。聞いて……ないよね?」


一瞬、胸が詰まり言葉が出て来ない。
だがすぐに、藤臣の言葉を信じよう、と思い直す。

彼女は目を閉じ、軽く首を振った。


「藤臣さんは違うとおっしゃいました。だから、彼を信じます」

「東さんにもう少し待って欲しいと言ってる。無事に結婚して、社長に就任したら……子供の父親になる、と。それがどういう意味か、君も本当はわかってるんじゃないのか?」


和威の言葉に、愛実は耳を塞いだ。

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