十八歳の花嫁
女を追い込み、本性を暴いた上で踏みにじるのは悪くない。
特に高潔ぶった女ほど、土壇場では滑稽(こっけい)な姿を見せてくれる。
この娘にしても同じことだ。
旧伯爵家のご令嬢などと大そうな肩書きを持ってはいるが……。所詮、身体を売って金を稼ごうとした今時の女子高生に違いない。
「そんな……あ、わたしは高校生でも十八歳です。ですから」
「いいのか? そんなことを言って」
「え?」
「君が十八歳未満なら、罪に問われるのは私だけだ。だがそうでなければ……君も同罪になる。高校生の君は、私に騙されてこのホテルに連れ込まれた――警察が来たら、そう言ってみたらどうだ? 君は単なる被害者になることができるかもしれない」
――本当に言い出すような娘であれば、存分に利用してやろう。青臭い少女など抱く気はなかったが、先ほどの感覚は悪くなかった。ならば処女を調教してみるのも悪くは……。
「あ……ありがとうございます」
美馬のよからぬ想像は、予想外の言葉で遮断された。
「今、何と言った?」
「わたしのことを気遣ってくださって……どうもありがとうございます。でも、犯罪だと承知でここまで来ました。あなたひとりに押し付けるつもりはありません」
愛実の声は震えていた。両手を胸の前で組み、潤んだ瞳で美馬を見上げている。
「わたしが同じ場所で何日もウロウロしていたから……。あなたのことも断わればよかったんです。なのに……こんなとこまで付いて来てしまって。あなたの奥さんや子供さんにまで、ご迷惑をおかけするかも……本当に申し訳ありません」
そのとき、ドアの外に人の気配を感じた。おそらく、合鍵を使って一気に踏み込むつもりだろう。
美馬はうなだれる愛実の左手を取り、自分に引き寄せた。
「私は独身だ。だが、逮捕は避けたい。協力する気はあるか?」
「それは……もちろん」
「いいだろう。その言葉、忘れるな」
美馬は彼女の手をきつく握り締め――。