十八歳の花嫁
四日間、藤臣は愛実に対して必要以上に近づいては来ない。
逆に、愛実のほうが藤臣の傍に行きたくなってしまう。優しさを示されるたびに、彼の笑顔を見るたびに、愛実は想像してしまうのだ。
『本当に君のことが好きになった。期限なしで私の妻になってくれないか?』
そんな風に言われたら、イエス以外に返事が見つからない。
でも藤臣は、愛実が結婚を承諾するのはお金のためだと思うだろう。
そう思われたくなくて、藤臣のお金を自分のために使うのは嫌だった。
「ここは……チャペルか?」
愛実は行きたい所を聞かれ、ホテル内のチャペルに藤臣を連れて来た。
天井部分には澄み渡る青空が描かれ、バージンロードは下からマリンブルーにライトアップされている。
左右に木製のベンチが並び、正面の祭壇には十字架があった。
「今日の昼間、結婚式があったんです。少し見せていただいて……とっても素敵でした」
純白のドレスを着て、床に引く長いレースのベールを纏った美しい花嫁。
愛実の年齢で憧れないと言えば嘘だろう。
「隣の遊園地でも結婚式ができるそうなんですよ。ご存知でした?」
「いや……だが、私たちが結婚するならT国ホテルだろうな。個人的には……君の望むところで挙げさせてやりたいんだが」
藤臣は申し訳なさそうに口を開いた。まだ、ちゃんとした返事はしていない。
だからこそ、愛実の様子が気になるようだ。
バージンロードは歩かず、彼女は一番後ろのベンチに腰を下ろした。
「もしわたしが、遊園地で式を挙げてくれたら結婚します、って言ったらどうしますか?」
愛実が見上げたとき、彼は面食らったような顔をしていた。
そして、わずか三秒後、藤臣の顔が綻んだ。