双子の御曹司

「手配は俺が何とかするから、渡瀬の思うように組んでみろよ?」

「おー出来る男は、言う事も違うね?」

「だろ?」と水野はドヤ顔し、私達は笑う。

「副店長と言えば、商品部でもお前達のこと噂になってるぞ?」

「マジ?」

「伊月さんは、今だに語り継がれるほど凄い人だからな? 商品部離れて、もう5年以上経つのにな? 俺も尊敬してる。まぁ皆あの人の正確知ってるから、冗談って分かってるだろうけど、新人はな…」と苦笑する。

「ふざけたオヤジにも困ったもんだよ!?」と私は、顔を歪める。

そこへ「誰がふざけたオヤジだぁ?」と伊月副店長が入って来た。

私は、見るからに嫌な顔をしてやる。

「お疲れ様です」水野は椅子から立ち挨拶をする。

「水野来てたのか?」

「はい水物のレイアウト確認で!」

「どぅだった?」

「バッチリすっ!」

副店長の問いに、水野は右手の親指と人差し指でオッケーとしてみせる。

「当たり前じゃない。私を誰だと思ってる?」と私は、声を大にして言ってやる。

すると「遥? 今日は早番じゃないのか?」と副店長が聞く。

「ええ、この後水野にゴチになるんで、麗華ちゃん待ってるんです。」

「そうか? 俺も久しぶりに、遥と飲みたいなぁ?」

「ふざけたオヤジは要らないんで!」とシッシッと手を振ってやる。

「オヤジは要らんか?」副店長はアハハと笑って食堂を出て行く。

そして扉を閉める時に、副店長はとんでもない爆弾を落とした。

「たまには早く帰って、パックでもして寝ろよ?見合いに備えてな!?」

っ!?
このヤロー!!

私は、副店長が出て行った扉を睨む。

あのオヤジ…!?
ワザと言い捨てて行ったな!?

勿論、こんな美味しい話を、水野が聞き逃す訳などない。

「お前見合いするの? マジ?」と爆笑される水野。

私は、「あのオヤジ!」チッと舌打ちをする。

「相手はどんな奴? イケメン? 職業は?」

「知らない!」

「全く?」

「全く!」

私は再び書類に目を落とす。

「知らなくて見合いするの!?」

水野は目を丸くして聞く。

「副店長が持ってきた見合いだから、顔を立てて会うだけ! 本気で見合いなんてしないし!」

「しかし、お前だけだよな? 伊月さんにあんな事言えるの?」

「まぁ付き合いが長いからね?」




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