双子の御曹司
閉店時間になり、私は水野と売り場に戻り、麗華ちゃんの閉店作業を手伝う。
「麗華ちゃん、商品整理はするからレジ締めしてくれる?」
「はーい。」
「日報は書いてあるから、後は売り上げ持って行くだけでいいよ?」
「了解でーす」
「水野、売上チェック入れて、事務所に付いて行ってね?」
「分かった!」
閉店作業も終わり、着替えを済ませ私達は店を出た。
いつもの近く居酒屋に行くと思っていたら、違っていた様だ。
「俺、今日車で来てるから、ちょっと移動していい?」
水野の提案で、水野おすすめの店に、車で移動する事になった。
着いた店は、白壁で、入り口は、屈まないと頭を打ってしまうほど、小さな格子戸で、戸の横に表札か!? と、ツッコミたくなるほど小さく《和いん場》と書かれた表札…じゃなくて、小さな看板があった。
その為、お店だと知らなければ、素通りしてしまうかもしれない。
店中に入ると、結構お客さんが入っていて、席が空くのを待っている人も居た。
私達は、水野が予約を入れて置いてくれたお陰で、待たずにすみ、席は全て個室のように仕切られており、私達は奥の席に案内された。
私の隣に麗華ちゃんが座り、水野は麗華ちゃんの向に座る。
お腹が空いてるからと、メニューを広げ、早速注文する。
「へぇー料理の品揃え良いじゃん!」
「だろ? 味も良いし、和いん場(ワインバー)と言うだけあって、ワインの品揃えも良いんだぞ! 麗華ちゃんワイン好きでしょ?」
「はい!でも…水野さん車だから、飲めないですよね?」
「俺の事は気にしなくていいよ?」
「すいません…水野さんって、素敵なお店知ってるんですね?」
麗華ちゃんの言葉に上機嫌になる水野を見て、私はニヤと笑う。
「わざわざ、車で移動してまで、いつもと違う店、ここに来たのはそう言う事ね?」と私は水野を見る。
「なっなんだよ?」
「別に! 私は生中と枝豆とどて煮!」
「お前はオヤジか!? せっかくお洒落なワインバーに連れて来てんのにビールかよ!?」
「ほっとけ!」
「お前さぁ、そんなんで見合い大丈夫?」
「あっ水野さんも聞きました? お見合いの話?」
「伊月さんに聞いた!」
「副店長の話だと、お相手はうち(店)のお客さんで、遥さんを見初めたらしいですよ? 条件も凄く良いらしくて?」
「マジで? 奇特な人が居たもんだな?」
「水野さん何言ってるんですか? 遥さん人気あるですよ! うちの店にも狙ってる人、結構居るんですから!」
「お前どんだけ猫被ってるの? まぁ条件良かったら、多少頭が禿げてても目をつぶれよ!?」
「水野さんひどーい。」
爆笑してる二人を睨み、運ばれて来たビールを乾いた喉に、イッキに流す。