優しい胸に抱かれて
『メッセージカードを作ってます』
『カード? それ、人形じゃねぇかよ』
何を言っているんだこいつ、と言いたげな表情をする日下さんへ手元の人形を見せた。
『これは、日下主任です』
『はぁ? 喧嘩売ってんのか、お前』
『だっははっ、口がへの字だぞ、そっくりだな! おっ、この目付き悪いチリチリ頭は佐々木か?』
と、豪快に笑う島野さんへ『これが島野係長です』と、笑顔で島野さん人形を見せると、瞬間湯沸かし器みたいに瞬時に顔を真っ赤にして怒り出した。
『俺はもっと目が大きいだろ! どこ見てやがんだ、このスーパーマンのような円らな瞳が見えないくらい、お前は視力も鈍いのか!』
スーパーマンという名前は聞いたことがあった。でも、実物を見たことがなかった私はネットで調べたが、島野さんにその面影は見受けられず、頭を傾けた。
視線の先で、眼鏡をしたまま瞼をこじ開けようとした島野さんは、再び思い立ったように笑い出した。
『ん? ははん…、さてはこの特徴のない顔は工藤だな? はははっ、人形まで面白味がないな!』
その様子をじっと見届けていた彼は、不満そうな表情で仕返しするかのごとく口を開く。
『…特徴のない顔って何ですか。島野さん、笑い過ぎ。これ、眼鏡なんてよく出来てて島野さんにそっくりじゃないですか、目が真っ平らなところなんか特に。よくこんな細かいもの作れるな?』
『ふんっ。柏木、こいつは捉え所がないから作るの大変だよなあ?』
『え…。島野さん、大人げないです』
『話がややこしくなるからてめえは黙ってろ。鈍ちんなんか構ってる暇はないんだよ。さてと、息抜きでもして来るか、その前に一服だ』
聞いといて黙ってろと言われ、目が点になる。仕返しに黄色いネクタイを急遽作ろうと思ったくらいだった。