優しい胸に抱かれて

金曜日、夕方。平っちが歓迎会の会費を徴収していた。経理課への書類提出も、そのくらいしっかりやって欲しいと思った。

その場にいた全員が、すっかり飲みモードで騒々しく固まっていた。その傍らで、当時管理係長だった岸さんと一緒に初々さを見せる新入社員の、林くんと保谷さんの二人が、緊張した面もちで時が来るのを待っていた。

行きたくなかったいつもの居酒屋に全員が勢ぞろいする。挨拶も早々に開始5分で先輩たちのジョッキからビールが消えた。そんな先輩たちは林くんと保谷さんになるべく話を振っていた。

『俺らん時もみんなこんなに優しかったっけ?』

隣に座る平っちがジョッキを傾ける。

『覚えてない、すごい緊張してた記憶しかないよ』

『俺も緊張してた。柏木なんてガチガチだったじゃん』

『そんな酷くないよ』

『いや、酷かったって。石みたいだったじゃん』

何度目かわからないが反省会や打ち上げで、2時間指定の飲み会の[しきたり]にはすっかり慣れてしまっていた。『これも立派な社会勉強だ』と、前川さんに命じられてから染みついていた。

私たちが落ち着いて飲んでいられたのは最初の注文を取り終わって、メニューが運ばれてくるまでの間の僅かな時間。その後は先輩たちの注文取りに回る。

自分のグラスに口を付けた瞬間、呼ばれては返事をする。たまに呼ばれてもいないのに返事をした。
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