優しい胸に抱かれて
 フロアの真ん中、普段より頭数が少ない朝礼。

「おはようございます」

 全員が揃って頭を軽く下げる。

「ああ、おはよう。まあ、昨日と同じだ」

 と、部長が昨日と同じ台詞を述べる。今週始まって月曜日以外「昨日と同じ」をもう3度続けていた。

「…それは一体どういう意味だ?」

 堪らず突っ込みを入れた日下さんに全員が注目する。

「いちいち言われなくても勝手にやれってことだ。何だ? 不満か?」

「いや、不満と言うより昨日はいなかったし。じゃあ、昨日は何だったんだよ?」

「昨日も、昨日と同じだ」

「はあ? 朝礼自体無意味じゃねぇかよ」

「無意味ではない。こうしてお前等の顔色を見てだな、ん? こいつ風邪ひいてやがるな、移したら殺すぞと脅したりだな。きちんと意味があるんだ。若干名、昨日と同じじゃない奴がいるようだがな」

 一番後ろで目立とうとしない私の姿を見つけてほくそ笑む。

 昨日と同じはずだった、朝までは。誰のせいだと遠くから睨み据える。本当に憎たらしい。

「世の中物騒とは言うけど、ここはもっと物騒だな。朝礼で殺人予告されるとは」

 姿は確認できないが、先頭にいるであろう彼の声が後ろまで届く。

「顔色だけなら勝手に見て廻ればいいじゃねぇかよ。じゃ月曜日は何て?」

 3年いなかったから勘を取り戻しきれていないのだろうが、聞き返す日下さんもどうかと思う。

 ほら、その隣で島野さんが笑いを堪えている。
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