計画的俺様上司の機密事項

「あのー、お楽しみのところ、恐縮なんだけど」


その男は寝癖をつけ、頭を掻きながら呼び止められた。


「誰だ」


部長はその男をみて、びくついている。

びくつく部長をその男はのんきに見ながら、大あくびをしていた。


「同じ会社の人間だけど、ていってもまだ知らねえよな」


「さ、さっさと職場に戻れ」


「は? この状況で何いってんの。それよりもさ、こんなところで昼間っから堂々とさ。夜まで待てねえのかよ。どんだけ性欲ギンギンなんだか」


その男は腕を組み、部長に詰め寄ってきた。

部長も背が高いはずなのに、その男の圧倒する姿に部長が小さくみえた。


「き、君……」


「指導する側がしっかりしないと。仕事はできないくせに、そういうことは一人前なんて。ダメな上司の代表って言われますよ」


といって、その男は胸ポケットからスマホを取り出し、手際よく操作する。


「あ、もしもし、常務ですか? 部長のことなんですけど、女性社員にセクハラしてるみたいですよー」


「お、おい。冗談だろ。常務に電話って。常務とどういう関係なんだ、君は」


「常務? こうやって連絡取れるってことはだいたい予想はつくよね?」


それを聞いて部長の顔は青ざめていた。


「や、やめたまえ。僕たちはれっきとしたおつきあいをしていてだな」


部長は目を吊り上げ、険しい表情をしながら、スマホを取り上げようとしていたので、男は器用にヒョイと体をかわしていた。


「公私混同も甚だしいっての。で、常務どうしたらいいんすかね?」


男はわざと聞こえるように大きな声で話をしている。

部長はわたしからようやく離れた。


「わ、わかったよ。有沢クン先にいっているからね」


「あ、部長」


そういって、部長はそそくさと逃げるように資料室から消えていった。
< 2 / 252 >

この作品をシェア

pagetop