計画的俺様上司の機密事項
シンちゃんと4階へ向かい、荷物をとって1階ロビーまで向かう。

警備員さんにだけシンちゃんといるところを見ていたけれど、幸い、他の社員の人とすれ違うことがなく、タイムカードを押して会社を出た。

通用口から外へと出ると、寒さは増して冷たい風が吹き付けてきた。

空をみると、雪でもふるのかな、と思ったけれど、星がきれいに瞬いている。

シンちゃんは手をつないでくれて、わたしの歩幅に合わせて歩いてくれた。


「さて、これからクリスマスの準備をしなくっちゃな」


「うん」


「おいしいものたっくさん作るからな」


「わかってる。わたしも手伝う」


「シェフ愛用特製フライパン鍋セットを焦がすから、はい、ダメー」


「な、何よそれ」


「夏穂はできること準備してくれたらいいんだよ」


どきん、と胸を打つ。

そうだった。わたしにしかできないことがあったんだ。

急に体の中心が熱を帯び始めた。


「うん、わかった」


シンちゃんに手を握りしめられながら、家までの道を歩く。

こうやって一緒に帰れるなんて幸せだ。

すれ違うカップルたちもお互いの顔を見合わせながらうれしいそうに駅やレストランのある方面へと向かっていく。

信号待ち中、ちらりと顔を向けると、シンちゃんがどうしたんだ、と顔をのぞいてくれた。

なんでもない、と答えたら、なんだよ、好きだってまた言ってくれるのかと思ったと照れ笑いを浮かべながら言ってくれた。
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