彼が嘘をついた
「早いけど、先に行って待ってるか」
父の言葉に、4人でお見合いの会場·中華レストラン『雅』に向かう。
昼時だから混んでいたけど、名前を告げると奥の個室へと通された。
相手はまだ来てないみたいで、少しホッとした。
中華なので、円卓だ。
そこに、父·兄·私·ヒロくんの順に座る。
普通のお見合いなら、和室の長テーブルに両家が向かい合って座るのだろうし、従兄弟のヒロくんまで同席しているのはおかしい。
しかし、今の私には、そんなことを気にする余裕などない。
そんな中、兄がとんでもないことを言い出した。
「父さん。
俺、年内には冴子と離婚出来そうだから。
…原因はあっちの浮気だけど、面倒だから慰謝料とかはいらない。さっさとサインさえ貰えればいいって、弁護士を通じて伝えてある」
「…そうか。
まぁ、子供がいなくて良かったな」
「いたら、"誰の子だ?"ってなるよ?
俺たち、本当に形だけの夫婦だったから」
「そうか。
だったら、早い決断で良かったんだな」
「あぁ…」
…仮にも妹のお見合いの日に、しかもその会場で、なんて話をしてるんだか。
「…やっぱり今時、会社のための政略結婚なんて無理なのかもしれないな」
父がボソボソと呟く。
「あぁ。俺もそう思う」
兄まで頷く。
…ちょっと待って!
私は今から、その会社同士の政略のために、お見合いをさせられようとしているのですが…
父の言葉に、4人でお見合いの会場·中華レストラン『雅』に向かう。
昼時だから混んでいたけど、名前を告げると奥の個室へと通された。
相手はまだ来てないみたいで、少しホッとした。
中華なので、円卓だ。
そこに、父·兄·私·ヒロくんの順に座る。
普通のお見合いなら、和室の長テーブルに両家が向かい合って座るのだろうし、従兄弟のヒロくんまで同席しているのはおかしい。
しかし、今の私には、そんなことを気にする余裕などない。
そんな中、兄がとんでもないことを言い出した。
「父さん。
俺、年内には冴子と離婚出来そうだから。
…原因はあっちの浮気だけど、面倒だから慰謝料とかはいらない。さっさとサインさえ貰えればいいって、弁護士を通じて伝えてある」
「…そうか。
まぁ、子供がいなくて良かったな」
「いたら、"誰の子だ?"ってなるよ?
俺たち、本当に形だけの夫婦だったから」
「そうか。
だったら、早い決断で良かったんだな」
「あぁ…」
…仮にも妹のお見合いの日に、しかもその会場で、なんて話をしてるんだか。
「…やっぱり今時、会社のための政略結婚なんて無理なのかもしれないな」
父がボソボソと呟く。
「あぁ。俺もそう思う」
兄まで頷く。
…ちょっと待って!
私は今から、その会社同士の政略のために、お見合いをさせられようとしているのですが…