彼が嘘をついた
そして、それを食べはじめる大樹。
俺も棒々鶏に箸をつける。

「…なぁ遥。
言いたいこと、聞きたいことがあるなら今がチャンスだぞ!
隼人に言いたいこと、聞きたいことがあるんじゃないのか?」

大樹に言われて遥は俺を見た。
そして、小声で尋ねた。

「…隼人くんは、私が社長の娘だって知っていたの?」

俺は答えた。

「あぁ、知ってた」

「いつから?」

「ん?もう5年前になるかな?」

「5年前?
まだ入社する前だし、面識もないのに…?」

「そのとき、初めて会ったんだよ。遥と…。
四つ葉フーズの創立30周年の式典のときに…」

俺は話しながら当時を思い出す。
遥も、そのときを思い出しているみたいだ。

「…俺、父さんに連れられてそのパーティーに出て、父さんと一緒に社長と、社長の娘さんに挨拶したんだけど、覚えてない?」

俺は、遥に思い出して欲しくて、当時を語る。
しばらく考えていた彼女だが、一瞬ハッとした顔をして俺を見つめた。
…もしかして、思い出してくれたのか?

「…あの、えっと…。
多分、本当に簡単に挨拶しただけだよね?
すぐにお父さん同士がどっかにいっちゃって、私、すぐにヒロくんのそばに逃げちゃった…んだけど?」

申し訳なさそうに告げる彼女。
思い出してくれたことに、俺はホッとする。
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