彼が嘘をついた
「分かった。よろしく頼むよ」

佐久間社長はそう言うと、俺の両親に遥のお兄さん·大樹までも立ち上がり、個室を出て行こうとする。

そんな中、遥は大樹の腕を掴んで、
「お願い。ヒロくん、行かないで!」
と、懇願している。

大樹は俺を見た。
俺は大樹に向かって大きく頷く。
それから大樹は遥を見ると、
「分かったよ。
大丈夫、俺も一緒にいるから」
優しくそう告げた。
遥は、安心したように大樹に向かって微笑む。
そんな2人を見て、俺は正直、嫉妬した。

個室に3人になったところで、
「せっかくだから、美味い昼飯を食べよう!
適当に頼んでいいか?」
と、大樹が聞いてくる。
俺は「あぁ、任せる」と答え、遥は縦に首を振った。
それを確認した大樹は、すぐにウェイターを呼んだ。

「酢豚にエビマヨに回鍋肉、あとエビチャーハンと卵スープ·小籠包に杏仁豆腐を3人分づつお願いします」

「かしこまりました」

さすが大樹だ。
ちゃんと遥の好きなものを注文している。
エビが好きな遥。
中でもエビマヨは大好物だ。

「お待たせいたしました。
棒々鶏に酢豚·エビマヨ·回鍋肉でございます」

料理が円卓に並んだ。

「じゃあ、食べながら話をしようか。
いただきます」

そい言って大樹が料理に手を伸ばす。
俺と遥も、それぞれ好きな料理を皿に取った。


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