彼が嘘をついた
「はぁ~」
と、恵が大きいため息を吐いた。

そして、
「やっぱり遠藤くんに遥は無理だよね…。
だって遥には、二宮くんや五十嵐くんって言うイケメンエリートが側にいるんだもん。
あのさぁ。
みんなが噂してるように、社長の親族って2人のどちらかなの?」

やはり恵はそこに探りを入れてきたか…

「……社長の親族が本社内にいるって噂は聞いたけど、それって総務部にいる大石の方が分かるんじゃねーの?」

隼人くんがそう言えば、続けてヒロくんも、

「そうだよな。
大石の親父さん、総務部の部長だったんだから、そっちの方が分かるだろう?」
恵に向かってそう言った。

「…ホントに誰なんだろう…?
私、その謎の人物のせいで、営業の野瀬さんにフラれたの」

「えっ…?」

恵の突然のカミングアウトに、そこにいた全員が彼女を見つめた。

恵はゆっくり話し出す。

「…私と付き合ったのは、総務部長の娘だからなんだって。
後々、私と一緒になれば出世できると考えたみたい。
だけど、社長の親族が社内にいるって話が出たら、それが同年代の女子社員だったら、そっちと付き合った方が出世できるから、"俺のためを思うなら、何も言わないで別れて欲しい"だって…」



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