君が罪なら俺は罰を受け入れる








『あ、ちなみに電話をしてきてくれたのは新郎の方だけどね』





付け足したようにそう言うと、山下は再びファイルを俺のデスク側に押し始める。



俺はその様子を目視するも、“櫻井さん”という人を思い出そうと必死だ。









『………いや、俺、そんな名字の知り合い、いないわ』





『ふーん』





俺の言葉にさぞ興味のなかったのだろう。



山下はそう短く返事をすると、積まれたファイルの中から一つのファイルを取りだした。







『あ、そういえば……』





山下はまた何かを思い出すように、そう呟く。








『なんだよ?』






『昔、フードコートで条件を出した者です、とかなんとか言ってたなー』






フードコートで条件を出した者………?




それって………俺の記憶の中に一致する人物はたった一人しかいないー………









『やっぱ知り合い?』





“知り合い”どころではない。




昔、好きだった女の幸せを任せた男ー……




忘れるはずがないー………










『あー…うん、まぁ。』




と、煮え切らない様子で返事をする俺に山下はニヤリとする。







『もしかして……昔の恋敵からの電話だったりして?』








何故か山下は鋭いー………



それとも俺の顔がバレバレだったのかー……












< 56 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop