奴隷少女と我儘王子
奴隷商人の言葉を聞いた両親は、ゴクリと唾を飲み、失敗はするなと言う視線を向けて来ました。
大丈夫ですよ。ここまで育ててもらった恩は忘れていませんから。
両親は私と言葉を交わす事も嫌がるので、心の中でしか言わないけれど。
「では、この本を音読しろ」
差し出されたのは、私の歳に合わせたのでしょうか、可愛らしい絵本だった。
「……っ!! この本は」
「何か問題でも?」
「いえ、私が唯一持っている本と同じ物でしたので」
この村は王都に近い為、本を手に入れる機会は何度もある。村の大人は、簡単な絵本程度ならば読める人もいるので、子供の為に絵本を買う人がいるのだ。
母も私の誕生日プレゼントにと、4歳になった日に買ってくれた。
……私が貰った、たった一つだけのプレゼント。
「では、早く読め」
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