好きと言えなくて
そうでした、田城ちひろが走るのが早い事忘れていた。


直ぐに追いつかれたし。


「焼肉食いに行くぞ。」


泣き顔見られたくなくて、うつ向いたまま。


私の気持ちなんてお構いなしに、個室がある焼肉屋へ連れて行かれる。


そんなに怒るなと言われ田城ちひろの顔を見ると、本当に困っているようで笑えた。


泣いたり笑ったり忙しい奴だなと言われるけど、多分どうして泣いたのか気づいてないと思う。


こうなったら、食べてやる。


「綾華が焼肉好きだとは知らなかったな。」


別に焼肉が好きな訳ではない。


今は焼肉を食べることで、この気持ちをごまかしたかった。


私の初恋が風間智尋だと言ったら、田城ちひろはどんな顔をするのだろ。


智尋兄に私みたいな子供が似合わない事ぐらい分かってる。


だから、気持ちを伝えたりするつもりはない。


慌てて食べて喉をつまらせた。


焼肉は何処にも行かないから、落ち着いて食えと言われる。


うん。


分かってるよ。


「清香とは本当に終わってるから、綾華が心配する必要はない。」


もしかして、田城ちひろには私の気持ちがお見通しなのか。


顔を上げられず、必死に焼肉を食べ続けた。






























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