好きと言えなくて
又々驚いた。


30階以上ある高層マンション。


ここで私は暮らすのか。


何処か他人事のように感じていた。


30階上がった上層に咲良母さんの住む部屋があり、部屋の中も今まで見たことのない豪華さ。


中々入れずに玄関に立っていると。


「綾華ちゃん入ってよ。あらどうした事か智尋が帰ってるみたい。」


智尋兄さんがいるんだ。


嬉しくて部屋に入ると、そこにいたのはよくテレビで見る人物。


智尋兄さんは何処にいるの。


「咲良母さん、この人は誰ですか。智尋兄さんは何処にいるんですか。」


咲良母さんがクスクス笑って、智尋なら綾華ちゃんの目の前にいるわと言った。


目の前にいるのは俳優の田城ちひろ。


「誰、このチビ。」


そりゃ、あなたと比べたらチビでしょうけど。


身長は155cmありますからね。


「綾華ちゃんよ。智尋も覚えてるでしょ。」


長身の男がガン見した。


怖くて後退りすると。


「なんで、綾華がいるんだよ。」


あら、言ってなかったかな、今日から綾華ちゃんと暮らす事にしたからと、咲良母さんはさらっと言った。


智尋兄さんがものすごく嫌な顔をした。


「母さんは何考えてるんだよ。俺は自分のマンション引き払ってここに住むつもりで帰って来たのに。」


思わずごめんなさいと頭を下げた。


智尋兄さんがここに帰って来るなら、私はいない方がいい。


私が出で行くと言うと、咲良母さんに止められた。


そして、昔みたいに三人で仲良く暮らせば良いのよと呑気なことばに智尋兄さんが大きなため息を落としす。


私はどうして良いのかな分からず、フラフラと玄関に向かった。


帰ろう、田舎に。



















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