名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「何見る?」

「うーんと」


恋愛ものはちょっとなあ、絶対気まずくなるから、できれば避けたい。


でも今ちょうど、恋愛が出てこないのなんてないんだよね。


なるべく恋愛要素の薄そうなのがいいんだけど、それはホラーくらいしかない。


ホラーなんて観たら絶対泣く。怖すぎて泣く。だからホラーはなし。


……とすると、あとはこう、恋愛モノとかになりかねない。


うんうん悩んで、家族モノにした。


演出にこだわりがある監督の、光の差し込み方が綺麗で、家族愛に焦点を当てた、感動すると評判の作品。


多分これなら大丈夫だろう。


「半分」

「ん」

「一口」

「ん」


キッシュを半分こして、フレンチトーストを半分こして、ケーキを一口交換して。

ポイントカードにまた少し、心が浮いて。

エスカレーターを上がって、映画館に着いた。


そうちゃんは当たり前のように隣り合わせでチケットを予約していたけど、……いや普通にわたしだってそうするけど、緊張するものは緊張するんである。


向かい合わせだって緊張するし、隣り合わせだって緊張するし、まあ何というか、その、そうちゃんの近くは緊張する。


……心音とか手汗とかバレてないといいなあ。


あと、顔が熱いのとか。


「佐藤さん」

「うん」


バレて、ないと、


「佐藤さん、暑い?」

「え、や、大丈夫……!」


……バレてました。
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