名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
何度もお願いしたわたしが悪いのは分かってるんだけど、あんまり嬉しくて浮かれてしまったのだ。


だって、みい、なんてそうちゃんが言うから。


幼なじみの定義を更新するから。


わたしに、新しくて特別な、二人だけの呼び名をくれるから。


そんなの、浮かれてしまうに決まっているじゃないか。


「……ごめん」

「っ」


若干すねつつ謝れば、そうちゃんは息を飲んで、固く口を引き結んだ。


わたしが謝ったことに何か意味を見出したのかもしれないし、わたしが謝ったことに傷ついたのかもしれない。


もしくは、わたしが謝ったという事実に、どうしてか焦ったのかもしれなかった。


わたしを映した目が、今までになく悲しげだったから。


「っ……」


そうちゃんは三日月の口を作ったものの、喉の奥を詰まらせて、引きつれた頰で浅く呼吸した。


ひゅ、と風が通る音がする。


強張ったまま、み、の口を作り。やめ。また作り。


そんな繰り返しの果てに。


突然、わたしの手をさらった。
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