名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
どちらからともなく手をつなぐ。


両手を合わせて、指を交差して、ゆっくり下ろす恋人つなぎ。


「みい」

「なに、そうちゃん」

「呼んでみただけ」


なにそれ、なんだろうな、と二人で笑った。


そうちゃんが好きだと思った。


……きっとわたしはもう、今まで何度も何度も繰り返したあの夢を見ないだろう。


抱えてきた思い出は全部、苦しいものではなくなったから。


『名前で、呼べよ』


オレンジのそうちゃんがよみがえる。照れた横顔がよみがえる。


真っ赤なそうちゃんが、目の前にいる。


……みい。そうちゃん。たったそれだけ。


だけど、そうちゃんが三日月の口で呼んでくれたなら、必ずわたしも口を大きく開けて呼び返すから。


ねえ、そうちゃん。


何度でも名前を呼んで。


何度でも名前で呼んで。


そうちゃんがくれた、わたしだけの、特別な名前で。


「みい」


そろりと唇が重なった。



Fin.
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