オフィス・ラブ #Friends
悪くないんだけど。

むしろ、いいんだけどね。


意外なことに、向こうの温度が低い気がしてならない。

ねえ、あたしに気があるんじゃないの?

もっと本気出してよ。


若干適当といってもいいくらいに、勝手に流れをつくる中で、ぎりぎり、あたしの喜ぶところも探って、押さえてくる。


ダメだ。

気持ちいい。


けど、あたしだけみたいで、悔しい。





終わるなり、床に放り出したワイシャツに手を伸ばして、胸ポケットから煙草を取り出すと。

灰皿の代わりになるものない? と訊いてきた。


いい度胸じゃん。

それ、女の子がされたくない行為で、相当上位に入るよ。

わかってやってるんだろうけど。



「なんで出し惜しむの」

「続きが知りたくなるでしょ」



なるほど。

画策するわりに、あっさり手の内を明かすなあ。



「別に知りたくないって言ったら?」

「その時は、あきらめるよ」



微笑んで、灰皿として差し出した、陶器のピアストレーに灰を落とす。

あたしはうつぶせになって、組んだ腕に顎を乗せて、考えていた。


この人と、次はある?

正直今、彼氏がほしいわけでは、まったくない。

先月の別れの痛みが、新しい人で埋まるとも思ってない。


この人が、前の人の元部下だったりとか、友人の上司だったりとか、そのへんはもう、気にしても仕方ないから、いいんだけど。

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