オフィス・ラブ #Friends
せっかくの休みなのに、こんな早くから出てきちゃって、バカだなあ。

そんなに競馬が好きなの?

そんなに、あたしに、会いたかったわけ?


薄く開いてる、油断した唇を見てるうち、キスしたいなあと思った。


そもそもあたし、キスって好きなんだよね。

お互いのいろいろが伝わるし、気持ちいい。

許されるなら、一緒にいる間じゅうしていたいほど、好きなんだよ、実は。


起こさないようにそっと、目にかかりそうな前髪をひと筋、払いのける。

したら、起きちゃうかな。

それはそれでいいか。


まわりもカップルだらけなので、周囲の目なんてあってないようなもんだし。

特に何も気にせず顔を寄せると、触れる直前にいきなり抱きしめられて、仰天した。



「わあっ!」

「なに、可愛いことしてるの」



おかしくておかしくて、たまらないって感じの声が聞こえる。

あたしはびっくりしすぎて、心臓が破裂しそうになっていた。

ぎゅうっと抱きしめられているせいで、堤さんの身体に乗っかる形で身動きがとれず、頬に芝生があたる。



「まさか、寝たふり?」

「違うよ」



言いながら、少し腕をゆるめて、あたしの髪に指を入れながら、目を合わせてきた。



「陽がかげった気がして、目が覚めた」



その声は、寝起きの少しぼんやりした感じが残っていて、あの甘さをどこか含んでる。

堤さんの身体は、日なたの光ですっかり温まって、くっついてるあたしまでほかほかしてきた。


両手で頭を引き寄せられるのを感じたので、素直にそれに従うと、間近で、くすっと笑う気配がして。



「まだだよ」



その唇が、頬に触れた。



< 23 / 66 >

この作品をシェア

pagetop