オフィス・ラブ #Friends
「なんだ、勘だったんですか」
「というより、推理だね」
日本酒からテキーラまで、めちゃくちゃな飲みかたをしながら、平然としている堤さんが言う。
この人に飲まれると、なんていうか、お酒がかわいそうだ。
人のこと言えないけど。
恵利たちが、不用意にあたしの相手のことなんて漏らさないだろうなと思ってたら、やっぱりそうで。
堤さんは、情報をつなぎあわせて、そういう推論を立てただけだったらしい。
この間の誘いを、冗談とは受けとめていなかったけど。
特にその場でアポをとられたわけでもないから、どうやって実現するつもりなのかと様子を見ていたら。
2週間くらい経過した今日、デスクワーク中に肩を叩かれて。
振り向いたら、綺麗な顔が見おろしていた。
うちの会社は、違う部門のフロアのロックは解除できないよう、IDカードで管理されてる。
たぶん、誰か雑誌局の人間と、話でもしに来たついでに寄ったんだろう。
いつの間に、と思いながら、こんにちは、と挨拶すると。
「夕方、空いてる?」
あまりに堂々と言うので、逆に誰にも注目されなかった。
変な人。
「堤さんて、末っ子でしょ」
「わかる?」
わかる、とうなずく。
だって、かぶってるもん。
そう言うと、おかしそうに笑った。
彼がつれてきてくれたここは、気取りすぎず雑すぎず、ちょうどいいわさわさ感が心地いいダイニングバーで。
初めて飲む相手で、しかも女を連れてくるには、ちょうどいい。
顔をつきあわせざるをえない、狭い円形のテーブルだけど、周りがそこそこにぎやかなので、その体勢も不自然じゃない。
耳元で話さないと聞こえないけど、妙なムードにはなりっこない。
いい具合の親密感と安心感を与えてくれる、かなりセンスの光るチョイスだった。