オフィス・ラブ #Friends

「あたし、末っ子は、無理なんです」

「試したこと、あるの」



ある。

お互い自由すぎて、完全に空中分解状態だった。

以来、末っ子は避けてきてるのだ。

といっても、高校の時の話だけど。



「そんなお子様時代と、一緒にしないでほしいなあ」



腕を組んで明るく言いながら、堤さんがこちらを見る。

ここまであからさまに狙われると、かえってやりやすいな。


色素の薄い目。

髪も、茶色とまではいかないけど、全然黒くなくて、細くてまっすぐで、さらっと柔らかそう。

顔立ちは整っていて、さっぱりと綺麗で、だけど背が高いせいか、中性的という雰囲気はない。

まあ今は、たぶんかなりハンティングモードに入ってるぽいので、そのせいもあるかもだけど。


この人、なんであたしをそこまで気に入ってるのかな。

あたしはこれまでも、ひと目惚れというか、知りもしない人から突然好きになられたりすることが多かったんだけど。

そういう人はたいてい、ちょっと話すと幻滅したように去っていく。

小さくて目鼻がはっきりしてるので、小動物みたいで扱いやすい印象を与えるらしい。



「だってあたしは、当時からたいして変わってないですもん」

「昔から、そんな感じなんだ」

「どんな感じですか」

「あけっぴろげと見せかけた、秘密主義」



びっくりした。

ほぼ初対面で、あたしのことをそんなふうに言う人はいない。

たいていまず、わかりやすいとかざっくばらんとか、そういう評価を下す。



「噂どおり、やりますね」

「だから、どんな噂」



楽しそうに笑って、つまみの野菜スティックを無造作にかじる。

そういうふとした仕草が、妙に美しくて、色気のある人。

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