雪見月
もう一度足踏みをして、きちんと動かせるのを確かめる。


「大丈夫ですか」

「はい。大丈夫です」


ふらつかないために土踏まずに重心を意識しながら立って、しっかり頷く。


うん、少しは安定した。


よし、と一人満足する俺に、彼女は親切な問いかけをした。


「どちらにお住まいですか? 微力ながら、よろしければご一緒します」

「あ、えっと」


一人では心もとない。


迷惑をかけるけど、絶対一緒に来てもらった方がいい。


少し迷ったのち、そんな結論に達して。


「お願いします」


最大限の感謝を込めて、俺はできる限り深く頭を下げた。
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