雪見月
「歩けそうですか?」


質問に答えるべく足を運ぼうとしてみたが、まっすぐ立つだけで不規則な痙攣を繰り返す。


立ててはいるが、ふくらはぎから膝へ、小刻みに揺れるのを防げない。


困って眉をひそめてしまった俺に、穏やかに提案が寄越される。


「膝を伸ばさずに、少し折ってみてください。変な姿勢になりますが多少は楽ですよ」

「えっ、あ、はい」


かけられた助言に驚いたのは。


この少女が、

そんな体育会系の対処法を知っているとは到底思えない、文学少女然とした雰囲気を湛えていたから。


俺の不躾な疑問を見透かしたかのごとく、彼女は曖昧に微笑んだ。


「以前私も、足が酷く痙攣したことがあるんです」


なるほど、と頷いて、その場で足踏みをしてみる。


重心が上手く取れずよろめいたが、不安定でも手応えはあった。


やはり経験とは偉大だ。
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