雪見月
謝罪を伴わせて話しかけた俺に、首を振る。


「いえ。事実ではありませんし、周囲からどう思われようと、これは人助けです」


気にしていません。


おそらくわざと断言した彼女は苦笑して、困ったように俺を見上げた。


「でも、……私も、ああいう勘ぐりは苦手です」


はぁ、と。

彼女の呼吸は荒かった。


ひどく乱れていた。


しかしそれを俺に悟らせまいとしてか、ゆっくりとした吐き出した息は非常に細かった。


駄目だ。そうじゃない、

違うんだ。


時折見せる大人びた微笑みも、

素らしい笑顔も、

ひたむきな一生懸命さも、全部彼女の素敵なところで。


俺は、優しくて穏やかなあなたにそんな顔をして欲しくなんてないのに。


苦しめるつもりなんて全然ないのに。


どうしてこうも非力なんだ。


どうして、寄りかかることしかできない。
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