雪見月
左に彼女、右に俺。


すみません、と謝ってから、努めて無表情で彼女の左肩に手を回す。


女子とこんな距離で、内心、無表情なんかではいられない。

それもこんな可愛くて優しい人。


でも、俺より彼女だ。


凄く密着してるし……うう、彼氏いたらほんと申し訳ない、俺なんかと……!


「あ、見て見て、優しい彼女だね」

「ほんとだ、偉いねぇ」


違うんだよ余計なこと言うなよ!


すれ違った見知らぬ女性たちに口を酸っぱくして言いたい。


断じて、

違うと。


気まずいじゃん主に俺が!!


「あ、あははー、すみません、何か」


乾いた笑いをもらしたのは仕方がないだろう。


俺と彼女ではどう見ても不釣り合いだ。


なのに、


こんな野郎と優しいただの女子が、初対面で周りからカップル認定されるなどと、誰が想像できただろうか。


焦った。
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