雪見月
「あのときの方…ですよね。千五百円」

「っ、はい!」


果たして彼女は覚えていてくれた。


忘れてなどいなかった。


良かった、当たったと、そう呟いて。


「私、待ってますから」


ふわり、微笑む。


「はい!」


嬉しくて、ただ嬉しくて、頬がだらしなく緩むのなんて構っていられなくて。



やっと、やっと、遅咲きの桜が咲いた。
< 47 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop