となりの専務さん
そんな専務も、薄手のパーカーとジーンズというラフな格好で。

ラフな格好でふたりで外を歩くという行為に、なんだか胸がちょっとときめく。
この前いっしょに服を買いに行った時はいろいろ急だったり強引だったりしたからデートって感じはしなかったけど、今は勝手に、これってプチデートかなとか思ってしまってる。朝ご飯食べにファーストフード店に行くだけだけど……。


でも、この前はひと目を気にしてボサボサ髪でメガネをかけてボロボロのジャンパーだった専務だけど、「この辺なら会社の人と会うことはまずないでしょ」ということで、今は髪も服もちゃんとして、メガネもしてない。



そんな専務と、ふたりでアパートから十分ほど歩いたところにあるファーストフード店にやってきた。


……お店に入ろうとすると、専務がなんだか少し、ソワソワし始めた。どうしたんですか、と尋ねると。


「……ファーストフードって、どうやって注文するんだっけ」

「え?」

突然のそんな質問に、思わず驚く。


「普通にレジで店員さんに注文して……もしかして専務、ファーストフード店に入ったことないですか?」

「……あるもん」

専務は小さくそう答えた。
どうやら小さい頃に一度だけ入ったことはあるらしいです。



その後、専務に注文の仕方などを教えつつ、いっしょにハンバーガーを食べた。ポテトは半分ずつ食べた。


会話は、たわいもない話をいろいろした。

とくに恋愛の話はしてない。仕事の話が一番多かったかな。


本当は専務の話をいろいろ聞きたかったりもした。昔の話とか、お家のこととか。
でも、専務は自分のことをあまり話さないし、お家のことはむしろ話したくないって感じがした。

専務が言わないことは、聞かないようにした。


だから話の内容が自然と仕事の話とかになったんだけど、雰囲気は全然デートって感じじゃなくても、私は専務といっしょに同じ時間を過ごしていることがうれしかったし楽しかった。

そして、専務が時々無表情を崩して少しだけでもほほえんでくれる……そのことに胸が温かくなって……ドキドキしたりもした。
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