となりの専務さん
「い、いいんですか? 行きたいです!」

「そんなに張り切らなくても。べつに高級店に行くわけじゃないんだから」

「い、いえ、その、なんというかっ」

専務といっしょに出かけられる、専務とまだいっしょにいられる、それがうれしいんです……とは言えないけど、やっぱり声が弾んでしまう。


「……あ、でもあまりお金がないので、その……」

「わかってるよ。じゃ、あっちの橋向こうにあるファーストフードは?」

「は、はいっ! 行きましょう!」

「本当はそういうのじゃなくて、ちゃんとしたお店でおごってあげて、俺との結婚をしっかり考えてもらいたいんだけどね。君、そういうの嫌がりそうだし」

「結……っ」

婚。
いやいや、この結婚のお話には、これ以上反応しちゃダメだ。


「それに、中学生同士のカップルが高級店に行ったり、高いものおごったりとかしなそうだしね」

専務はあくまで、『中学生みたいな恋愛』にこだわっているらしい。
それが逆にエロいとか言われると反応に困るけど……でも、今まで誰かとちゃんと付き合ったことがない私からしたら(大樹くんのことはこの際除く)、急にキスされたりするよりも、ずっと安心してそばにいれます。


そんなわけで、お互いに一回部屋に戻り、着替えて、お財布などを持ってからまたアパートの前で集合することになった。


今までだったらファーストフード店に行くのにちゃんと身支度整えようとは思わなかったけど……でも専務といっしょだし、それに、化粧品やオシャレにもっと向き合っていきたいと思ったから、簡単にではあるけどメイクを直し、服も、さすがにすごいオシャレ着とかじゃないけど(そもそもそんな洋服はまだ持っていない……)、お姉ちゃんにもらったばかりのカーディガンとスカートを穿いて外に出た。



「あ、ちょっとかわいくなってる」

先に待っててくれてた専務が、私の姿を見て、ほんの少しだけ笑いながら冗談っぽくそんなことを言った。
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