となりの専務さん
私がそう伝えると、凛くんは黙ったままじっと私を見つめ。でもすぐに、

「……うん」

と答えた。


「ごめんね。友だちとしてはすごく好きだし、いっしょに話しててすごく楽しいし、音楽も尊敬してるし、でも……」

私が言うと、凛くんは少しなにかを考えたような顔をして。


「……もう二度と」

「え?」

「もう二度とあんな乱暴なことはしない」

「……」

「それでも、ダメか?」

凛くんは、きっとすごく反省してくれてる……それはとても伝わってくる。きっと、もう二度とあんな乱暴なことはしないって信じられる。簡単に人を信じてしまう私だからってわけじゃなくて。きっと今の凛くんを見たら、誰だってそう思う。


だけど。



「気になっている人がいるの」

凛くんが本当の気持ちを話してくれてるんだから、私も彼に本当の気持ちを話さなきゃって思った。


「……わかった」

凛くんも、そう言ってくれて。


ただ、

「好きな人って、いっしょにライブに来てたあの人?」

「いや、あの人は……会社の同期」

「じゃあ好きな人って誰?」

「えと……会社の人」

大樹くんが元カレだってことや、私の好きな人が同じアパートの隣人の響さん、ってことはまだ凛くんにも言えなかったけど。


……でも、いつかちゃんと話すからね。もう少しだけ、待っててね、凛くん。


その後、今さらながらふたりで飲み物だけ頼み、それを飲みながら恋愛とは関係ない話を少ししたりして。
どこかぎこちない会話だったけど、私は嫌ではなかった。凛くんも、そう思ってくれてたら、うれしい。


そして、ふたりいっしょにファミレスを出て、凛くんはこのままバイトに向かうと言って、駅の方へと歩いていった。


私は……いろんなことを思いながら、ぼんやりとひとりアパートまで向かう。
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