となりの専務さん
この気持ち、伝えたい。

たとえ、私なんかが専務と釣り合わないってわかってても。
専務にとっての特別な女の子は、私じゃなくてハヅキさんだってわかってても。


伝えたい。
誰かのことをこんなに好きだと思えたのは、初めてだから。


……だけど、その前に……。




その日の夜。
私は、アパートから歩いて十五分くらいのところにあるファミレスで、ある人を待っていた。

専務、じゃなくて。


「いらっしゃいませー。おひとりさまですか?」

店員さんの声にパッと顔を上げると、やっぱりそうだった。

「凛くん!」

私は席を立ち、彼にわかるように声をかけ、軽く手を挙げた。

私に気づいた凛くんは、まっすぐにこっちに向かって歩いてきてくれた。


「ごめんね、急に呼び出して」

正面の席に座った凛くんにそう言うと、彼は。


「べつに……。急にファミレス来いっていうLINE来てびっくりしたけどな。まあ今日は練習もないし、バイトの時間もまだだから、全然大丈夫だぜ。でも、わざわざファミレスじゃなくて、アパートでもよかったじゃねぇか」

「……大事な話だから、立ち話もよくないかなって」

「……そうか」

やっぱり部屋にはあげようとしない時点で、彼は私がこれから話そうとしてる内容に予想はついていたかもしれない。


「あの……」

私は、凛くんへさっそく話を切り出す。


「あのね、私、凛くんとは付き合えない」
< 141 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop