となりの専務さん
……昨日いっしょに寝たのはたまたまで。
専務のお部屋で、私が作った夕飯をいっしょに食べて。
そのあと、自分の部屋に戻ろうとする私を専務が引き留めて。
それでも私は部屋に戻ると言ったのだけど、専務が「やだー」と、以前からたまに見せるかわいい姿を見せてきて……。
で、そのままいっしょに寝てしまった。
こういうことが、時々あります……。

……といっても! 同じ布団にいっしょに寝たけど! なにもしてはいない!

……中学生みたいな恋愛は、あくまで私を落とすまで。専務はそう言ったけど……結局は、つきあってからも……その……いわゆる私の初体験はまだで……。

私が、キスするだけで未だにあまりにドキドキしてしまっているから……専務も気を遣ってくれているのだと思う。それは申しわけないと思う……。でも、でもエッチ……はもう少し先で……。



私は布団からそっと抜けて、朝ご飯の支度をしようとする。
あ、でも、まだ当分寝るかな。専務、休日はたまにお寝坊さんだしな。
でもみそ汁くらいはとりあえず作っておこう。


そうこうしてると、専務が起きたようで。
専務は布団に入ったまま、「おはよう」と声をかけてくれた。


「おはようございます。もう起きていいんですか?」

「うん……よく寝た」

「それはよかったです」

「君がとなりにいるとよく寝られる。できればそろそろしたいけど」

「そっ……それはもう少しお待ちを……!」

私が動揺すると専務は小さく笑って。

「わかってるよ。包丁持ってるんだからちゃんと前見て、落ち着いて。危ないな」

はっ、そうだった。
私はみそ汁のお豆腐を切るのを再開した。
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