となりの専務さん
しばらくして、いくつめかの駅に到着すると、専務は「着いたよ」と言って電車を降りた。

私も慌てて専務に続き、電車を降りた。


街の方に行くよとはあらかじめ言われていて、着いた先はファッション街で有名な駅だった。大学生の時に友だちと何回か来たことはある。

駅を出て、専務はすたすたと慣れた様子で歩いていく。


「専務、この辺りにはよく来られるんですか?」

「たまにね」

「お買いものに来られんですか?」

「買いものというか、勉強というか。こういうファッション街に来ると、仕事で役立つ情報とかを得られることもあるから」

なるほど……。化粧品もファッションと共通するものがありますし、私たちの仕事に流行は必須ですもんね。
……お休みの日も常にそうやってお仕事のことを考えているのかな……すごいな……。


でも専務は本当に、どこに向かってるんだろうか。



「ここ入るね」

あるお店の前で専務は私にそう言って、言葉通りお店の中に入っていった。
そこは、いかにも高級ブランドの洋服がずらりと並んだお店だった。こんな高そうなお店、もちろん私は入ったことはない。


「専務、ここ女性向けの洋服店ですよ」

私は専務にそう話しかけるけど、専務は店内の洋服を見渡しながら「知ってる」と答えた。


「あ、誰かにプレゼントとかですか?」

「うん」

「もしかして、例の婚約者さんですか?」

「ううん」

「じゃあお姉さんとか、妹さんとかですか?」

「ううん。石川さんならどの服が好き?」

「私ですか?」

プレゼントの参考に女子の意見を聞きたいってことかな。こんな高そうな服は着たことがないから即アドバイスができず、私も専務と同じように辺りを見渡しながら「うーん」と悩む。

あれもかわいい、これもかわいい。うーん、やっぱりすぐには決められない。


「どこに着ていく服かにもよりますよね。デート用の服なのか、私服なのか、とか」

私がそう言うと、専務は「会社用なら?」と聞いてきた。
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