となりの専務さん
「うーん、なんの仕事かにもよると思いますが、私服勤務のOLさんとかならこの服とかどうでしょう? 色も落ち着いてるし、それでいて襟がかわいいです!」

私は近くのマネキンがコーディネートしていたブラウスを指差して、言った。
専務が洋服をプレゼントしようとしている女性の年齢がわからないけど、私に参考意見を聞くくらいだから、きっと私と歳が近い人なんだろう。それなら、色や細部にオシャレで明るい感じがありながらも、子どもっぽさはなく落ち着いた雰囲気のあるこのブラウスがいいんじゃないかと私は思った。


すると専務は。

「そうなんだ。じゃ、それは決まり。あとで買う」

そう言って専務はまた別の服を見始める。


「で、でも、プレゼントする方の年齢や好みにもよると思うので私の意見だけで決めるのは……」

「それに関しては大丈夫だから、次はこの辺りの服でかわいいと思うもの教えて」

「え、ええ?」

専務はやっぱり、私と会話する気なんてないのだろうか。
とりあえず私は、専務に言われた通り、専務の言う“この辺り”の服を見渡す。

でも。


「あー、ちょっと待ってくださいね! やっぱりどれもかわいくて悩んでしまいますっ」

服を見ながら私がそう答えると、専務は近くにいた店員さんに、こっちに来てくれと声をかけた。

そして、私と同い年くらいの若い女性スタッフさんが、私たちのもとへとやってくると。


「すみません。こっからここまで、全部」

と、答えた。


「⁉︎ ちょっと待って!」

私は立場も忘れ、慌てて専務の腕を掴み、彼を止めた。


「なに?」

「なに、じゃないですよ‼︎ なに言ってるんですか‼︎ ご利用は計画的にお願いしますよ‼︎
ていうか『ここからここまで全部』って、マンガとドラマ以外で初めて聞きましたよ!」

息を荒げながらそう伝えると、ひとまず店員さんには「大丈夫ですので」と伝えた。
店員さんはすぐにその場から離れた。冗談と思ってくれたかもしれない。
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